第13話:おぢさんのやる気スイッチはどこにあるのか隅なく探してほしい

やる気スイッチ、君のはどこにあるんだろう。
見つけてあげるよ。君だけのやる気スイッチ。
誰もが耳にしたことがあるであろう、とある個別学習指導塾のCMに流れる歌詞だ。

あの個別学習指導塾がどのようにやる気スイッチを見つけてくれるのかは分からないが、一応こちとら、人生経験の豊富なおぢさん。
「やる気の出し方」なら知っている。

真面目な話をするのであれば、脳の快感と行動を司る部分である「線条体」を活性化させることがやる気を出すことにつながるといわれている。
線条体とは、快感を司る領域で大脳の主要な構成要素のひとつで、この線条体を活性化させることが、いわゆる「やる気の出し方」につながる。
では、どのようにして線条体を活性化させ、やる気を出すのかというと、

・考えるよりも先に動き出す「行動力」
・行動をおこした結果、達成感をイメージする「想像力」

この2つの「力」が混じり合うことが重要なポイントになってくる。

では、どのように行動すればよいのか。
最初の取っ掛かりとなる、何でもいいから「とりあえずやる」というアクションを起こすことなのだ。
だが、「それができるなら、最初っからやっているわ」と思われる方が多数派ではないだろうか。
まずは、最初のアクションを起こす為の抵抗感を取り払うことが大事になってくる。
取っ掛かりのハードルを思っている以上に低く設定することがミソなのだ。

例えば、「掃除をしなければならないが、全然やる気が起きない」という時は手の届く範囲だけやってみるとか、身の回りだけをコロコロをするなど、自分の一番近くの整理整頓を5分間だけで良いからやってみる。
「運動をしなければならないが、全くやる気が起きない。」という時はとりあえず身支度だけでもやってみる。
一度行動を起こしてしまうと「行動力」にエンジンがかかり始める。
やり進めるうちに「めんどくせえ」という心理的な負担が軽くなり、行動をやり遂げた後のビジョンが明確になるという「想像力」が発揮される。
すると、やる気の基となるドーパミンというホルモンがドパドパ脳内に分泌され、積極的に物事に取り組もうとする意欲が湧くというのだ。
ドーパミンがドパドパ出ることで、達成感というある種の快感を得ることとなり、脳は快楽に溺れ、「あと、もう少しだけやってみよう」と徐々にやる気が出てくるという寸法だ。
行動を起こすためのきっかけは何でも良い。
例で挙げた様に、とりあえず、チョコっと初めて見るというやり方でも良いし、音楽を聴いたり、動画を見るなどをして自分の気持を高めるのも良いだろう。
とにかく何でもいいから、まずは行動を起こすということが大事なのだ。

とまぁ、基本的な「やる気の出し方」はそんな感じだ。たぶん「やる気スイッチ」の正体もそんな感じなのだと思う。
そうなってくると、この私こと「面倒くさおぢさん」には疑問がでてくる。
あの個別学習指導塾のCMで記されている「やる気スイッチ」の形状はスイッチがON、OFFの形とは
違うのではないだろうか。
やる気とはいわば車のエンジンの様なものだ。
エンジンをかけ、暖気運転の後、全力で突っ走る。
「スイッチ」として例えるのであれば「ピタゴラスイッチ」の様に色々な過程を得て、最終的に「スイッチが入っていた」という形のスイッチが正しいのではないだろうか。

それとも、あの個別学習指導塾の「やる気スイッチ」はCMの通りON、OFFがハッキリとした、まるでブレーカーの様に「パツン!」とスイッチを入れてくれるのだろうか。
もし、そんなスイッチがあるのであれば、もうすぐ50歳になろうとしているおぢさんの「やる気スイッチ」も見つけていただきたいと切に願う。

ちなみに、前半で基本的な「やる気の出し方」を、もっともらしく紹介しているおぢさんは、普段、どのようなやり方で自分の「やる気スイッチ」を押しているのか。

それは「ギリギリまでやらない」ということだ。

もはや、やる気があるとか、やる気がないとか言っている場合じゃあない。やらなければいけない。
いや、やるしかない状況に自分を追い込むのだ。
人間、追い込まれると必要以上の力を発揮する。
そんな「火事場のクソ力」を発揮することにより、今まで1000万パワーの悪魔超人にも打ち勝つことができたのだ。そして得る「友情パワー」。

違う違う。そうじゃ、そうじゃなぁい。

今まで書き上げた説明は何だったのかと思える謎な行動と全くかみ合わない知識。
おぢさんは、そんなギリギリまで自分を追い込まないと出ない「やる気スイッチ」から卒業したいのだ。

やる気スイッチ、君のはどこにあるんだろう。
見つけてあげるよ。君だけのやる気スイッチ。

おぢさんは、もうすぐ50歳になるというのに、いまだに探している。あのブレーカーのようなON、OFFがはっきりとした「おぢさんだけのやる気スイッチ」。
向かいのホーム、路地裏の窓、そんなとこにあるはずもないのに。

(2022.04.01:コラム/上野龍一)


【 上野龍一 】
~プロフィール~

1975年4月28日生まれ
新潟県新潟市出身
「有限会社看板の上野」代表

経営者として人生経験を積む傍ら心理学、コーチング、エゴグラム心理分析などを研究。
自らを実験台に実績を繰り返して企業や学生への講師やコーチング、セミナーなどを開催する「可能性創造研究所」を設立。

また、地域イベントの企画、運営をするユニット「ニイガタ工務店」としても活動中。

「働くということは社会に貢献すること」を信条とし、様々な地域活動や企画運営を行っている。