第14話:アドバイスおぢさんは嫌われがちな件

4月1日、19歳になる長女が
「この度、晴れて成人しました」
と妻に挨拶していた。

まぁ、思春期の父と娘なので
「俺には?」というお約束の嫌われるワードを
言いたい気持ちは一旦飲み込む。

その娘の言葉に「はぁ?何で?」妻。
「いやいやいや。。。」と
そこは黙ってはいられない私。
「4月から成人年齢が18歳に引き下げられましたので。だからですよ」と説明する。
しかし、妻の頭の中にある「?」は消えないようだ。
「なんで?誕生日に成人するんじゃないの?」
「これから4月1日が成人の日なの?」と聞き返す。
さすが、わが妻。
私の想定斜め上の返しをしてくる。

そこに痺れる。憧れる。

「これから、18歳になる人は誕生日で成人ですけど、すでに18歳を超えている人たちは4月1日からということですよ」と説明するも、
「は?なんで?」「誕生日が来てからでしょ?」
と理解していただけない。
しまいには、
「私たちの時代には、そんなのなかったよね?」と、私には想像もつかない返しをしてくる。
それに対して
「でしょうね。。。」としか返すことができない私。

私は、なんと貧相なボキャブラリーしかないのか。
曲りなりにも、クリエイターの端くれとして活動している自分の未熟さを恥じる。

私のファシリテーター能力が未熟なこともあり、もしかすると「サザエさん」の様に些細な日常を笑いに変えることができたのかも知れない出来事を自分の能力の低さゆえに失ったのだ。
この失敗を繰り返さないためにも、客観的に話がかみ合わなかった原因を探ってみる。

今回の大きな原因となったものは「知識量に差」と「共通認識のズレ」による
「漠然とした話の内容」が原因であったと考えられる。

この原因を解決するためには何をすればよかったのか。
まずは「相手がどこまで理解しているか」
「どこから認識がズレているか」
と、相手の理解度を確認しながら話を進めることが大切であった。

以上の反省点をふまえ、自分の頭の中のことを、相手が理解しやすいよう整理し、分かりやすい言葉で伝えることで、今回のような会話のズレを減少することができると考えられる。

そのためにも、自分のファシリテーター能力を上げ、自分の「論理的思考(ロジカルシンキング)」を磨いていかなければならない。

論理的思考は、いわば「複雑なものをシンプルにしていく思考法」だ。
正しい論理構造の組み立て方や、因果関係の捉え方を身に着け、相手が理解しやすくなり、納得性のある伝え方もできるので今回のような会話のズレは減少していくであろう。

ビジネスの世界ならば。。。

今回の会話の相手はクライアントでなく、奥様なのだ。

私はディペートや会議などで異なる議論をぶつけ合うのは好きだ。
そうすることで私と違う考え方も
「ああ、なるほどね。」と
一定の理解をし、相手との合意形成を図ることができるのだ。

しかし、奥様はそんな論理的思考を嫌う。
どちらかというと、感情的思考(エモーショナル)な考え方をもった方なのだ。

論理よりも感情にウエイトを置き、自分が今何を感じているのか、どういった感覚なのか、その感情をどう表現するのか。という部分が妻の思考である。
そんな奥様に「あなたは話をどこまで理解しているか」
などと聞こうなら「馬鹿にしているのか」と激高し、議論にすらならなくなる。
しかし、クリエイターやアーティストといった人たちにとっては、論理よりも
感情にウェイトを置く「感情的思考」の方が多い。
自分が何を感じているのか、どのような感覚なのか、その感情をどう表現するのかといった部分が作品を作るには重要になる。

もしかしたら、私より妻の方がクリエイターに向いているのかもしれない。

感情は一人ひとり異なっている。
喜怒哀楽といった感情は言葉として表現すれば同じだが、一人ひとりが、そこから感じることは、まったく異なるのである。
感情的思考で物事を考える妻は、自分だけの唯一無二の考え方をする。
芸術やアートといった領域においては絶大な力を発揮する。
そう考えると、妻の方が確実に「エモい」のだ。

そこにシビれる!あこがれるゥ!

私も元々は感情的思考な人間であったが、色々な知識と経験により、論理的思考へと矯正されてきた。
論理的思考と感情的思考。違いは明確だが、どちらも人生においては必要な思考だ。
論理的思考だけができればいいわけではなく、感情的思考に偏っていてもいけない。
人生において、論理的思考と感情的思考をうまくミックスさせ、場面によって
使い分けるのがもっともベストだといえるだろう。

そう思い、妻に私の論理的思考を植え付けようとして、かれこれ20年以上が経つ。
おかげで「アドバイスおぢさん」と妻から忌み嫌われるようになりつつあるが、一つの社会実験として今後も継続していければと思う。

(2022.04.08:コラム/上野龍一)


【 上野龍一 】
~プロフィール~

1975年4月28日生まれ
新潟県新潟市出身
「有限会社看板の上野」代表

経営者として人生経験を積む傍ら心理学、コーチング、エゴグラム心理分析などを研究。
自らを実験台に実績を繰り返して企業や学生への講師やコーチング、セミナーなどを開催する「可能性創造研究所」を設立。

また、地域イベントの企画、運営をするユニット「ニイガタ工務店」としても活動中。

「働くということは社会に貢献すること」を信条とし、様々な地域活動や企画運営を行っている。