第30話:おぢさんだから、少し肩書きにこだわってみようと思う。

私はあまり役職というものに興味がない。
何故ならば、私も一応経営者をさせて
頂いているが、年商何億と言われる
大会社であろうが、私のように吹けば
飛ぶような、毎月、お金の心配をしながら
泥水をすすっている人間も同じ「社長」
というカテゴリーに入る。つまり、
私のようなウンコみたいな社長よりも、
大企業の課長の方が、ステキだからだ。

私の中では「肩書き」と「役職」は
チョット違う。私の中での「役職」
とは、あくまで「仕事上の役」
という意味でとらえており、
「肩書き」というのは簡単に言うと
「あだ名」に近いかもしれない。
まぁ、厳密に言えば違うのかも
しれないが、「役職」が企業の
ポジションを表すものだとしたら、
「ハイパーメディアクリエーター」
など、自分の個性やスキルを前面に
押し出した、自由度の高い名前を
つけられるのが「肩書き」なのでは
なかろうか。

あだ名上の「社長」とか「部長」と
いう方もいらっしゃるので、その辺りを
混同してしまいそうだし、良く調べて
見ると「このおぢさんは、何を言って
いるんだ?」となるかもしれないので、
あくまで私の主観として捉えて
いただけると幸いである。

とはいえ、人という生き物は、
とかく肩書きにこだわりがちである。
とくに、私たち、おぢさん世代から
上の世代は、それが顕著かもしれない。
なぜならば、おぢさん世代には
自己顕示欲の強い方が比較的多い。
御多分に洩れず、おぢさんも
自己顕示欲が強く、また、
承認欲求モンスターでもあるので
もしかしたら、肩書きには、
チョットこだわるのかもしれない。

先ほども書かせて頂いたが、
私の中では「肩書き≒あだ名」
という感覚なので「その人物を
表すもの」つまり、「キャッチ
フレーズ」と一緒かもしれない。

テレビを見ていると何かと
キャッチフレーズが目につく。
特にスポーツの世界では顕著だ。
プレーに対して、キャッチフレーズ
というものは全く必要ではないが、
あれば、なんとなく感情移入が
しやすくなり、親しみがもてる。
一時期、有吉弘行氏があだ名で
ブレイクしたのも短いフレーズで
その人物を分かりやすく表現していた
ことが広く受け入れられたからであろう。

昔から私も自分にキャッチフレーズを
付けている。そうすることで、
自己紹介や自分はどんな人間であるかを
解りやすく説明ができるという
メリットがあるからだ。

そんな私が自分に付けたキャッチフレーズは
「常識ある野蛮人」というものである。

野蛮人とは、粗野で教養がない人。
不作法で粗暴な人。という意味だ。
しかしながら、私は幼少の頃から「武道」を
ならい、ゴリゴリの体育会系で育ったため
粗暴で教養がない訳ではない。むしろ、
他者を慮る日本のこころを持ち合わせた
「パカラー」である。しかし、見た目の
風体と、自分に納得のいかないもの
に対しては自分の意思を曲げないという、
病に近い、面倒臭いおぢさんであるが故、
どうしても振り払えない「野蛮」という
アクセントが付きまとう。という点から
そのようなキャッチフレーズを使っていた。

30代頃から使い始めていた、「常識ある
野蛮人」というキャッチフレーズ。
10年ぐらいが経ち、おぢさんも
いよいよ50代に片足を突っ込み
始めると、その言葉に違和感が出始める。
なぜなら、年を重ねることにより、
ライフスタイルも変わりつつある。
あまり、老いのせいにはしたくないが、
今まで出来たことが出来なくなったり、
興味があったものが無くなったり。
そして何より、こらえ症というか、
バイアリティーが無くなりつつある。
10年前であれば、「明日やろうは
馬鹿ヤロウ」と目の前のことを
一生懸命にこなしていたのだが、
最近では、「明日のことは明日の
私に任せよう」と逃げグセが
ついてしまい、翌日になると
「昨日の俺、マジふざけんな」と
憤慨する毎日となっている。

人は一度、逃げグセがつくと
なかなか直らない。
自分の中で消化出来ていれば
問題ないのだろうが、他人様に
迷惑を掛け始めては、それは
もはや「クズ」である。

そんな自分のクズさ加減に
しばらく憤りを感じていたのだが、
先日、動画にて相席スタートの
山添寛氏が「クズ紳士」という
キャッチフレーズで呼ばれていて
ハッとした。

私は特段、女遊びをする訳でもなく、
不義理をする訳でもなく、どちらかと
いうと面倒見の良い方。「クズ」と言う
ほど、お金にだらしがない訳でもない。
ただただ、自分にだらしがないだけなのだ。

「クズ紳士」というキャッチフレーズが
もしかしたら今の自分にピッタリなのかも
しれない。しかしながら、他人のモノを
そのまま使うというのも、はばかられる。

なんだかんだ、私は自分が大好きおぢさん。
私の良いところ、悪いところ。この陰と
陽によって、私という、おぢさんは
形成されている。おぢさんにおける
「短所」も言わば個性であり、大好きな
私の一部なのだ。

おぢさんは自分の中にある「クズ」を
愛おしく抱きしめ、いつか「クズ紳士」
を超えるキャッチフレーズを自分に
プレゼントしてあげたいと思う。

(2023.03.24:コラム/上野龍一)


【 上野龍一 】
~プロフィール~

1975年4月28日生まれ
新潟県新潟市出身
「有限会社看板の上野」代表

経営者として人生経験を積む傍ら心理学、コーチング、エゴグラム心理分析などを研究。
自らを実験台に実績を繰り返して企業や学生への講師やコーチング、セミナーなどを開催する「可能性創造研究所」を設立。

また、地域イベントの企画、運営をするユニット「ニイガタ工務店」としても活動中。

「働くということは社会に貢献すること」を信条とし、様々な地域活動や企画運営を行っている。