第16話:「オムレツ」と「玉子焼き」の違いが何なのか。気になるおぢさんは野暮というものである。

先日、妻が見ていたテレビ番組に何気なく目をやる。
内容は「オムレツ」と「玉子焼き」を何品か作るという番組内容。

MCとして林家三平、ゲストにIKKOとミキティーが出ており、なかなかトリッキーな組み合わせだなぁと、思いながらも、ついつい見入ってしまう。

笑点を降板してから久しぶりに見る林家三平の姿を妻と二人で「元気そうで何より」と安堵する反面、林家三平の風体に少し心配になる。
言葉を選ぶと、笑点の時よりも、ふくよか。
ゲストが美白のIKKOとミキティーということもあるのか、肌がくすんでいる様にも見える。
そのような内容を夫婦の間柄ということもあり、実際にはスラング気味に意見交換を行う。

次に議題にあがった内容は「世間では、なぜ玉子焼きをそんなにも好きなのか?」という内容。
基本的に私は、玉子焼きを「好き」か「嫌い」で問われるのであれば、「どちらでもない」と答えてしまうほど、ニュートラルど真ん中な食べ物だ。なので、ごはん屋さんや居酒屋さんでも、自ら進んで注文をすることは無いし、あれば食べるという程度のものなので、まったくの思い入れが無いのだが、世間では「玉子焼き、甘い派?しょっぱい派?どっち?」と派閥ができるほど、関心のある食べ物だ。

「なぜ、皆そんなに玉子焼き、玉子焼きと言うのかねぇ」という私の質問に対し、
「定番だからじゃねぇの?」と妻の回答。
なるほど、答弁として内容はふわっとしているが納得は出来る。
ソースは無いが、「定番」というエビデンスは取れている。
さすが、作る側の視点。言葉に説得力がある。
そんな質疑応答の後、妻も私も
「玉子焼きはニュートラルな食べ物」という立場を確認し、
「食べるのであれば、おろし大根と醤油は必要」という妻と
「どちらかというと玉子焼き自体には味は要らないが醤油はかけたい」という私との間で合意形成がなされた。

そして本日、私が一番気になっていた話題へと切り込む。
そう、この番組では「オムレツ」と「玉子焼き」を作っており、ずっと気になっていた「オムレツと玉子焼きの
違いとは何か?」という疑問である。

間髪入れずに妻からは、「玉子を巻くか巻かないかじゃねぇの?」という回答が来たが、先ほどの回答とは違い、
今回は腑に落ちない。
何故ならば、今回の回答は妻の想像であり、ソースもエビデンスも無いのだ。

そんな私を「面倒臭い男」と蔑んだ視線で「わからない」という回答とともに、その日の議論は終了する。

そうなると私のモヤモヤが止まらない。
とりあえず、「オムレツと玉子焼きの違い」と検索をする。
すると約20万件もヒットする。
流石はインターネット。私程度の男が考える疑問など、インターネット上にすべて載っているのだ。
とりあえず、YAHOO!知恵袋に目をやる。
ベストアンサーを要約すると、「調理法が違う。」「洋風と和風」「玉子焼きは巻く、オムレツは包む」
ということという内容に「なるほど!」と納得する反面、自分の言葉に対する読解力の無さに少し落ち込む。

そう、私は「玉子焼き」という言葉を安直に受け取り、「玉子を焼いたものが玉子焼き」という額面通りにしか言葉を受け取ることができなかったのである。

野球で例えるならば、「セリーグ」と「パリーグ」の違いを聞くのではなく、「ベースボール」と「野球」の違いを訪ねるという野暮なことをしていたのである。

振り返ると、年々歳を重ねる毎に自分に対して「野暮だなぁ」と感じることが多々ある。
そんな、小さな野暮の積み重なりが「面倒臭おぢさん」として私が女性から「モテない」理由なのではないか。
もっと考え方をやわらかく、多様性を持ち、思ったことを一旦自分の中で消化する。
それが「粋なモテおぢさん」としての第一歩となる鍵なのではないか。

そんな一途の光を見出し
「粋なモテおぢさん」を目指す第一歩として、
「出し巻き玉子も玉子焼きでしょ?」
という自分本位な考え方に蓋をすることにした。

そして、更なる心の奥から湧き出る野暮な疑問。
「玉子と卵の違い」に対し、誰にも尋ねることなく独り静かに検索をするのである。

ちなみに「玉子と卵の違い」とは、ソース元として、ウーマンエキサイトのE・レシピ【「卵」と「玉子」の違いあなたは分かる?疑問を解決して正しく使おう!】の記事によると、生の状態が「卵」、調理後が「玉子」として使い分けられているとのこと。

なるほど。そうするとネット記事の中でも、「玉子と卵」が使い分けていないものが散見するなぁ。
と気になりムズムズする。

野暮な「面倒臭おぢさん」が「粋なモテおぢさん」になる道は果てしなく遠い。

(2022.04.22:コラム/上野龍一)


【 上野龍一 】
~プロフィール~

1975年4月28日生まれ
新潟県新潟市出身
「有限会社看板の上野」代表

経営者として人生経験を積む傍ら心理学、コーチング、エゴグラム心理分析などを研究。
自らを実験台に実績を繰り返して企業や学生への講師やコーチング、セミナーなどを開催する「可能性創造研究所」を設立。

また、地域イベントの企画、運営をするユニット「ニイガタ工務店」としても活動中。

「働くということは社会に貢献すること」を信条とし、様々な地域活動や企画運営を行っている。