第15話:おぢさんは「おじさんブーム」という幻想に惑わされないようにしようと思う

「おじさんがブームらしい」そんな噂を小耳に挟んだ。

こっちとら、昨日今日おぢさんになった訳ではない。
求人情報を見ても年齢で募集要項から外れる。
それくらい、ベテランのおぢさん。
「おぢさんのスペシャリスト」なのだ。
そんなおぢさんには全くと言っていいほど、ブームの恩恵に与った記憶がない。

新潟という地域がら、東京から1~2年遅れてブームがやってくると思われるが、そのせいか?
とりあえず、ソースとなる情報を探す。
すると結構出てくる。

目についたものだと2020年のマイナビニュース。
「空前のおじさんブーム! みんなが魅力的だと感じる「おじさん」像とは?」というもの。
この記事では、【最近のマンガ・アニメ・ドラマなどで、“魅力的なおじさんキャラ”が増えていると思いますか?】
というアンケート調査の結果、男性の48.9%、女性の75.6%が「とても増えた」「増えた」と
回答したそうだ。記事では、「女性の方が男性よりも20ポイント以上多く、男性目線では気付かれない
魅力あるおじさんキャラが登場するコンテンツに、女性たちが注目していることがわかった」とある。

ん?そうなのか?私の読解力が乏しいだけなのか?
女性が好むコンテンツ内のおぢさんが「良い味を出している」というだけの話にしか思えない。

また、この記事では女性に「現実のおじさんに何を求めるか」を尋ねたところ、
1位は「優しい・包容力がある」
2位は「家族や恋人を大切にしている」
3位は「仕事がデキる」
であったそうで、「理想のパートナー像」を投影しているかのような結果になった。
と記事では書いてある。

これは。。。おぢさん関係なくねぇか?
と思ってしまったのは私だけであろうか。

その他にも、外見については、“魅力的なおじさんキャラ”について聞かれた時には「おじさん独特の渋さ・哀愁」が重視されていたが、現実となると男女ともに「若々しいかっこよさ・清潔感」の方が上位であり、特に「無理な若作りではない、年相応の清潔感」を求める声が多かった。と記事では結んでいる。

さっぱり、意味が分からない。
若々しいかっこよさを求めながら、無理な若作りは求めないなど、意味が分からず混乱する。

私なりにこの記事を要約するならば、「無害でソコソコ使えて、それでいて、多少カッコイイおぢさんだったら、そばに居ても問題ない」ということにしか思えない。

なぜ、これで「空前のおじさんブーム」といえるのであろうか?
そもそもブームという言葉を調べると、「にわかに人気を呼んで、一時的に非常な勢いで流行すること。または、特定の人が熱狂的にもてはやされること。また、その期間」ということだ。

つまり、おぢさんというだけで「キャーキャー」いわれて、「ウハウハ」になることが「おぢさんブーム」なのではないか?
これでは、「多様化するコンテンツの一つとしておぢさんっていうジャンルがあっても別に構わないよね」ということではないか?

「違うわい!こんなもの、おぢさんブームじゃないやい!」
と折れかける心を
「いやいや一つの記事だけで決めるのは、まだまだ早い!探せばあるはずだ!見つけるんだ!本当のおぢさんブーム!」
と、わずかな望みにしがみつく。

すると、FNNプライムオンラインの記事にて
【つ・い・に!「シン・おじさんブーム」到来!?…若い女性に人気の“かわいいおじさん”を徹底調査】
という「めざましテレビ」で放送された内容の記事を発見。
2022年1月とソースとしても新しい。

中身は【錦鯉がM-1グランプリで優勝、紅白歌合戦で松平建さんがマツケンサンバⅡを披露するなど、いま「おじさんブーム」は、ますます加速していて「シン・おじさんブーム」に突入している。】
と出だしから香ばしい内容。

ちょっと待て。錦鯉が優勝したのは、あくまで「面白かったから」であって「おじさんだったから」ではないし、マツケンサンバも「おじさんだったから」紅白に出られた訳ではない。

ヤバい。読み進めるのが怖い。
読み進めると、かわいいおじさんを探せ!
的な内容になっていく。

私なりにこちらの記事も要約してみると、職を失い、再就職先の慣れない仕事をミスするおじさんを「かわいい」という言葉で軽蔑する若い子という、涙無くしては読めない内容。

その後も、「老眼のイケメンおじさんがかわいい」とか「一生懸命しゃべる先生がかわいい」だの、おじさん全体の話でなく、あくまで個々のおじさんが個性的であるという内容に、そっと記事を閉じた。

そう、悪いのは全部私。
「おじさんブーム」という言葉に淡い期待を抱き、おじさん好きの女性がワンサカでウハウハという妄想を抱いた私がいけないのだ。

ブームとは一過性のもの。
ブームではなく、私個人が多くの方から「認められるおぢさん」として決してウカれず、ましてや変な気を起こさないよう、足元を見ることが大切であるということを学んだ反面、なんでもいいから「バズりたい」というダークサイドのおぢさんを、どのように封印するか頭を悩ませている。

(2022.04.15:コラム/上野龍一)


【 上野龍一 】
~プロフィール~

1975年4月28日生まれ
新潟県新潟市出身
「有限会社看板の上野」代表

経営者として人生経験を積む傍ら心理学、コーチング、エゴグラム心理分析などを研究。
自らを実験台に実績を繰り返して企業や学生への講師やコーチング、セミナーなどを開催する「可能性創造研究所」を設立。

また、地域イベントの企画、運営をするユニット「ニイガタ工務店」としても活動中。

「働くということは社会に貢献すること」を信条とし、様々な地域活動や企画運営を行っている。