今年で二回目となる新潟劇王。
私が所属するユニット「ニイガタ工務店」として昨年に引き続き今年も参加させていただいた。
さて、まずは私なりに演劇というジャンルをどこまでが演劇なのかを考える。
ウィキペディアによると、「演劇とは、観客に対し、俳優が舞台上で身振りや台詞などによって、物語や人物などを形象化し、演じて見せる芸術のこと。
俳優が観客を前にして、舞台上で思想や感情などを表現し伝達しようとする一連の行為であり、それらを鑑賞する目的もある。」とある。
つまり、お客さんに対して日常でない自分を表現するのであれば、演劇というジャンルとして捉えられる。そう考えた。
もしも、「そんなものは演劇じゃない」と否定されたとしても、「それはあなたの感想ですよね?」と西村ひろゆき氏のように跳ね返せる自信もある。
演劇とは芸術。芸術とは自由でなければならないのだ。
さて、第二回目となる新潟劇王。
総勢15団体。昨年の9団体から大幅に増えている。しかも県外勢多数。
周りを見渡すと県内外で活躍する猛者ぞろい。
その中に異色の「悪ふざけおぢさん」がいるという何とも痺れる状況。
出演するメンバーと言えば、昨年から引き続き、「一切セリフはしゃべりません」とか「セリフを覚える気はありますが、たぶん無理ですね」など、「あなたの道楽に付き合ってあげます」という当事者意識の欠けた強者達だ。
しかも食材で例えると、恐ろしいほどクセとエグ味をもつ「珍味」の部類。
この食材の調理方法は限られている。しかし、昨年と同じものを出す訳にはいかない。
では、この状況下で私たちのような演劇の素人が格式のある大会に参加する意義とは何か?
昨年参加をして、私個人としても、団体としても、クリエイター集団「ニイガタ工務店」としても、活動の幅が広がったことは事実である。
始めてのシナリオ、それを演出するという行為。そのような経験が、後にコラムを書くスキルであったり、「おばけ屋敷」や「謎解きゲーム」などのイベントを自ら企画し、行うことができるようになった一つの要因である。
PDCAサイクルとして置き換えるのであれば、
第1回新潟劇王で初めてのシナリオ作成→プラン(計画)
第1回新潟劇王で初めての演劇→DO(実行)
インプットしたものを1年間アウトプット→チェック(評価)
と考えるのであれば、
今年はアクション(改善)
として第二回新潟劇王に参加することはPDCAを完成させるためにも必然なのである。
昨年の戦術として、「同じ土俵で戦わない」というものがあった。
では、今年参加するに意味合いを考えるのであれば、昨年のように違う土俵で戦うのではなく、「素人なりに同じ土俵で戦った場合どうなるのか」という、私たちが、今どのような立ち位置にいるのかという検証を行う必要がある。
そんなことを考えながら、シナリオができる。
なかなかニッチでシュールなものがけたと思いつつ、裏で照明やら音などをするオペレーターが足らないことに気づく。
「やべえな。」そう思いながらも、音の演出を無くし、ライトの演出をON、OFFだけの簡単なものにすれば大丈夫だろう。と演出方法を最大限までそぎ落とし、シンプルなものにする。
ON、OFFだけならば会場の照明さんにお願いできるであろう。
しかし、人生というものは中々うまくは行かない。
本番二日前の舞台リハ。問題は山積みだ。
まず、「音、照明は参加団体の方でお願いします」と断られる。
やべえ、人が足りねぇ。本番まで時間がない。
とりあえず、「ミスター男気」である友人に頼み込む。
「ミスター男気」は「OK、何とかする」と快諾。
さすが。持つべきものは友。
舞台でセリフを読むメンバーの一人は、舞台でボソボソしゃべる。
「もう少し声をはれる?」と指示を出すと、「これ以上は出せねっす」とやけに反抗的だ。
しかも「ここは僕のやりたいようにやらせてもらう感じで良いですかね?」
と、まるでベテラン俳優のような返し。この男の肝っ玉には感心する。
「これ以上声をはると軍隊みたいな話方でしか、しゃべれませんよ?」
と圧を掛けてくるメンバーに対し、「それはあなたのさじ加減ですよね?」と返したいのをグッと飲み込み、「OK。軍隊のような演出で行こう」と指示をする。
これは、JAZZのセッションと一緒だ。「私の書いたシナリオ」という枠組みの中で自由に演じてもらおう。
そんなこんなで本番当日。
抽選の結果私たちがトップバッター。
よっしゃ。会場を暖めるのは俺たちだ!
結果は、ぶっちぎりの最下位。
それはもう、清々しいくらい。
まあ、想定通りだ。演劇のプロ達がひしめく中、同じ土俵で戦えばこうなることは必然である。
しかし、演劇界は優しい。
悪ふざけおぢさん達がワチャワチャやっているものにもキチンと良い部分を見つけていただき、褒めてくれる。
会場でも笑ってくれる方もいたし、SNSで褒めてくださる方もいる。
2年計画であった新潟劇王という私のPDCAは一旦終了となる。
次の計画、実行、評価、改善がどうなるのかは分からないが、これからも面白いことを考えて実行していこうと
悪ふざけおぢさんは思うのである。
ちなみに、当日わざわざ会場で観劇してくださった、
イロドリプラスさんからは「想像の斜め上を行くシュールさに会場内は独特な雰囲気に包まれておりました。」とコメントをいただいた。
観劇に来てくださったことを感謝するとともに良い意味として受け取りたい。
(2022.05.13:コラム/上野龍一)
【 上野龍一 】
~プロフィール~
1975年4月28日生まれ
新潟県新潟市出身
「有限会社看板の上野」代表
経営者として人生経験を積む傍ら心理学、コーチング、エゴグラム心理分析などを研究。
自らを実験台に実績を繰り返して企業や学生への講師やコーチング、セミナーなどを開催する「可能性創造研究所」を設立。
また、地域イベントの企画、運営をするユニット「ニイガタ工務店」としても活動中。
「働くということは社会に貢献すること」を信条とし、様々な地域活動や企画運営を行っている。