このコラムを寄稿させていただいているイロドリプラスさんに「にいがたショートストーリープロジェクト」という事業がある。
簡単に説明すると、新潟にまつわる内容で400~2000文字以内の小説を募集し、優秀な作品は書籍になるという内容だ。
このプロジェクトを知った時は、「すげぇ事やっているなー」と完全なる傍観者であったが最近ふと思った。
「あれ?そういえば、2000文字書いているな。コラムで。私」
そうだ。内容の善し悪しは一先ず置いておいて「2000文字の文章を書く」というスキルは持っているようだ。
すぐさま、脳内で自分会議が行われる。
「いやいや、言うても、あなたの書いている物はコラムですやん。小説言うたら創作ですよ?」
「いやいや、あなた新潟劇王出てますやん。シナリオって創作ですよね」
モノの数分で結論が出る。
「小説、書いてみようかしら。私」
そうなると得意の「やりたがりの血」が騒ぐ。
ひとまず、募集要項を確認する。
「条件は一つ。作品に”新潟のエッセンス”を加えること。舞台が新潟。新潟出身の主人公。新潟の名物や名産を盛り込むなど、ちょっとでいいので”新潟のエッセンス”を入れてください」とある。
「ちょっとでいいんかい!」
と軽く突っ込みを入れる。
どの程度の”新潟のエッセンス”を入れるべきか。
その判断で物語のコンセプトが変わる。
どうしたものか。
曖昧なものほど判断が難しい。
なぜなら私は、いい加減なようで細かく、細かいようでいい加減な「面倒臭いおぢさん」なのだ。
ひとまず、参考に過去の作品を拝読させていただく。
物語は多種に富んでおり、恋愛ものや青春もの、普段の何気ない日常などから、SFのような作者が好きなように”にいがた”を綴っている。
なるほど。それでいいのだな。
それこそ正解など無い。
各々が思い描く”にいがた”を綴れば良いのだ。
しかも、このプロジェクト、1人が何作品も応募できるではないか。
非常に気持ちが楽になる。
試しに一つ書いてみよう。
とりあえず、初めて書く小説だし、がっつり”にいがた”を題材にしよう。
頭に浮かぶ新潟の名所、物産。
様々な”にいがた”からチョイスし、とりあえず、細かいことは考えず、ペンを走らせてみる。どのような着地点になるのかは自分でも解らない。
書いてみると2000文字というものはあっという間だ。むしろ、足りない。
決められた文字数の中で自分の思いを伝える。
「ここは説明しないと解りづらい」
「ここは読者にイメージさせたい」
まるで、一丁前の作家さんではないか。
文章を書いては消し、消しては書き。
同じところを行ったり来たりしている。
なんとか自分の中でひとまず出来上がる。
では応募するか?
いや待て。
とりあえずは添削してもらいたい。
そうだ。私の所属するニイガタ工務店には演劇のプロがいるではないか。
演劇のプロは私が傷つかないように忖度しながら、アドバイスをくれる。
さすが、演劇のプロ。
そして、私を扱うプロである。
頂いたアドバイスを参考に自分なりに書きなおす。もはや最初に書き上げたものから半分以上は変わっている。
なんだかんだ、思考を重ね、自分なりに納得のいくものができる。
それにしても、創作のモノを書くというのは面白い。
文章を書くということはコラムと一緒だが、実際のものと創作のものでは、頭の使う部分が、やや違うように感じた。
普段、モノづくりを生業としているが、このように言葉を使ったモノづくりというのも性に合っているのかもしれない。
後は、私の作ったものが、どれだけの人に受け入れてもらえるかということだ。
そこが一番難しい。
「小説書いてみたけど、どう?」
と色々な人から意見を頂戴しようとそれなりに見せてみたが、帰ってくる言葉というと、
「面白い」という言葉よりも
「あなたらしい」という言葉が返ってくる。
所詮、素人が描いた作品。
面白いか面白くないかで聞かれると、「面白い」という程度の作品なのだろう。
しかし、そんな作品でも「自分らしさ」というものが隠しきれずに溢れ出ているということは、自分の中でもそれなりに評価できる。
何であれ、クリエイターと謳っているのであれば自分の世界観が何よりも重要になる。
そんな自分の世界観を出せるように、もう2、3作品書いてみようかなと思う。
ちなみに、「できることなら書籍に乗りたい」と選考委員の方に遠まわし懇願したが、
「審査があるからね」とやんわり断られた。
「さすが、選考委員会はシッカリしているぜ!」
と、にいがたショートストーリープロジェクトの誠実さと不正の無いことを立証しつつ、次回作の構想をするのである。
(2022.06.10:コラム/上野龍一)
【 上野龍一 】
~プロフィール~
1975年4月28日生まれ
新潟県新潟市出身
「有限会社看板の上野」代表
経営者として人生経験を積む傍ら心理学、コーチング、エゴグラム心理分析などを研究。
自らを実験台に実績を繰り返して企業や学生への講師やコーチング、セミナーなどを開催する「可能性創造研究所」を設立。
また、地域イベントの企画、運営をするユニット「ニイガタ工務店」としても活動中。
「働くということは社会に貢献すること」を信条とし、様々な地域活動や企画運営を行っている。