第27話:違いのわかるおぢさんになるには確認を怠らないことが重要と気づく

とりあえず生で。

懇親会や会食などで、お酒を飲む機会が
ある時には、口にした方も多いであろう
鉄板のフレーズ。

ビール好きの方は「ビールに失礼」と
思われる方もいるかとは思うが、
これは、「何でも良いから、とりあえず生で」
と言う決してビールを軽んじた意味ではなく
「数ある好みはあるけれど、乾杯までの
流れをスムーズにするために一先ずは、
ビールを頼もう。」という、他を慮る
美しき日本のこころなのだと解釈している。
なので「お酒を飲めないからお茶で。」
という方以外で「私はカシスオレンジ」
みたいな1人だけ飲みたいものを頼む
他を慮らないスタイルの方には
私の中のダークネスおぢさんが現れ
「こいつは他を慮らないヤツ。」
というレッテルを貼り付けてしまう。

そんな習慣が身に付いているからなのかは
解らないが、私ぐらいのおぢさんになると
「生」という言葉に異常に反応を示し、
ある種の興奮を抱くのである。

先日、奥さんにお使いを頼まれ、
仕事帰りにスーパーへ買い物に出かけた。
玉子、牛乳、お肉、野菜。奥さんからの
指示されたものを買い物かごに入れていく。
その日の買いものリストの項目には、
「わさび」と書かれた項目あり、私は
奥さんからのミッションを、コンプリート
するため、わさびのある陳列棚に向かう。

ちなみに、庶民派である私の舌は
高級なお店に出てくる、一本のわさびを
サメの皮が貼られたおろし器で擦って
食べるような食べ方をする本格的な
わさびはあまり口に合わない。
なぜなら、確かに香りは良く、
鼻にツンとはするのだが、口に入れると
辛くは感じないからだ。
刺身を食べる時に醤油にわさびを
溶かして食べるような庶民派のおぢさん
には、安いわさびが良く似合うのだ。

話を戻す。
陳列棚には様々なメーカーのわさびが並ぶ。
さてさて、美味しそうなわさびはどれだと
わさびを眺める私はある違和感に気づく。

ちょっと待て。
わさびには「本わさび」と「生わさび」
と表記されたものがあるが違いは何?
どっちが何?となる。融通が聞かない
頭の固いおぢさんは、わさびの陳列棚で
プチパニックとなる。どっちだ。
私が奥さんからのミッションとして購入を
指示されたわさびは、一体どっちなのだ。
本わさびと生わさび、どっちを買うべきか。
この二択を間違ってしまった場合、
奥さんからは「使えない男」という
レッテルを貼られてしまう。
もしかしたら、折檻されるかもしれない。
私の足は恐怖で震える。

そんな時は「報連相」だ。

報連相とは、コミュニケーションに重要な
「報告」「連絡」「相談」の3つをまとめた
ビジネス用語だ。ビジネスの基本的な
コミュニケーションであり、迅速かつ
的確に行わなければならない。

迷った時は基本に立ち返るべきだ。
とりあえず奥さんに電話をかける。
あなたの所望するわさびは本わさびと生わさび
どっちなんだと。私は違いを分かっていない。
案の定、奥さんも違いを分かっていない。
どっちだと。どっちを購入すれば良いのだと。
私の質問に対して奥さんが導き出した回答は

美味しい方。

って、いや知らん。違いが分らんのに、
どっちが美味しいのかなんて知らん。
とりあえず、わさび購入に関する決定権は
私にあるらしい。そうなると話は冒頭に戻る。

そう、私は「生」という言葉に異常に反応を
示し、ある種の興奮を抱くのである。

そうなると「生わさび」一択だ。
生わさびを購入し帰宅をするのだが、
一度気になったものを解決しないと
こころのモヤモヤが晴れずに気持ちが悪い。

本わさびと生わさびの違いはなんだ。

結論からいうと、本わさびと生わさびの違いは、
本わさびは日本原産のわさび、生わさびは
本わさびと西洋わさびのミックス品で原材料と
なるわさびの種類が異なるそうなのだ。
どちらが辛いかと言うと、西洋わさびの
入っている生わさびの方が辛味は強いらしい。

「生」という言葉に本能的に反応した
おぢさんは、奇跡的にも好みの味を導き出した。

しかし説明文には、まだ続きがあった。
生わさびにも、また分類があるらしく、
「本わさび入り」と書かれているものは、
本わさびの使用率が50%未満。
「本わさび使用」と書かれているものは、
本わさびの使用率が50%以上とのことで、
西洋わさびの多い方が辛いということなのだ。

では、私の買った生わさびは50%以上か否か。
冷蔵庫に駆け寄り確認をする。
結果は「本わさび使用」と書かれた50%以上。

辛味の強いものが好みの私。
本来であれば「本わさび入り」と
書かれたものを買うべきであった。

いつもだ。いつもそうだ。
私はいつも大切なところで二択を失敗する。

迷った時こそ基本に忠実でなければならない。
なぜ、迷った時にすぐ調べなかったのか。
しかし、起こってしまったことは仕方がない。
「本わさびが多い方が香りも良いよね。」
とポジティブに捉えることにした。

ちなみに、本わさびも日本原産の品種で
あれば、中国やベトナム産でも本わさびを
乗ることができるそうだ。

世知辛い世の中を生き抜くためには、
常に気構え、確認を怠らないことが
必要のようだ。

(2022.11.11:コラム/上野龍一)


【 上野龍一 】
~プロフィール~

1975年4月28日生まれ
新潟県新潟市出身
「有限会社看板の上野」代表

経営者として人生経験を積む傍ら心理学、コーチング、エゴグラム心理分析などを研究。
自らを実験台に実績を繰り返して企業や学生への講師やコーチング、セミナーなどを開催する「可能性創造研究所」を設立。

また、地域イベントの企画、運営をするユニット「ニイガタ工務店」としても活動中。

「働くということは社会に貢献すること」を信条とし、様々な地域活動や企画運営を行っている。