第24話:おぢさんはスカっとする話でスカっとしない

小さい頃からアニメやマンガ、特撮が
大好きだった。 だって男の子だもん。

あと、時代劇なども好きで、
子どもの頃から水戸黄門や大岡越前など
よく見ていた。そんな幼小期だったことも
あるが、「勧善懲悪」という考え方が、
男の子の根っこの部分には刷り込まれて
いると思う。

最近、ネット記事やYouTubeの
お勧めなどに「スカッとする話」という
のが良く出てくる。テレビの番組でも
あるみたいだ。しかし、おぢさんは
どうも、あの手の話が好きになれない。
個人的に全然スカッとしない。

2020年10月2日、当時のアメリカ
大統領、ドナルド・トランプ大統領と
メリッサ夫人が新型コロナウイルスの
陽性が公表された日に、アメリカの
出版社メリアム-ウェブスターが、
「シャーデンフロイデ」という単語の
検索数が普段より3万500%増加し、
最も検索された単語の1つになったと
報告したそうだ。シャーデンフロイデとは、
「シャーデン(損害)」と「フロイデ(喜び)」
が組み合わさった言葉で、「他人の不幸から
得る喜び」のことなのだそうだ。

「人の不幸は蜜の味」などという言葉も
あるように認めたくないが、この喜びは
大変なじみのある感情だ。そして、喜びを
味わった後、おぢさんはいつも罪悪感を
感じるのだ。こころの中に陰と陽がある。
例えば、私たちは友人が転ぶと笑う。
しかし、それと同時に助けようと駆け寄り、
無事かどうかを気にかける。人間の感情は
移ろいやすい。それを受け入れることで、
おぢさんは、この罪悪感や恥の意識から
解放されることになるのだ。

ニューポートビーチの地域精神医学の
マガビ博士は、ごく一般的な感情である
ことを強調している。多くの人が、不安、
生い立ち、気質など、様々な要因で、
この感情を抱く。一方で、「自尊心の
低さや自信のなさに苦しむ」人たちが
抱きやすい感情で、羨みや嫉妬から
生じている可能性があるともいうのだ。
中程度のうつの人は、軽いうつの人に比べて、
「フロイデンフロイデ:他人の成功から得る
喜びの感情を体験し辛いらしいのだ。

なるほど。元来、こころの中に16歳の
乙女がいる「メンヘラおぢさん」である
私がこの感情を持つことは、
居たって自然のことらしい。

テレビやネットにあふれているスカっとする話。
そもそも根っこの部分が病んでいるおぢさんには
「え?その程度でスカッとするの?」という
話の落ちが多いこともあるし、仕返しの仕方が
陰険なものが多い気がする。

俺たちは白でも黒でもない。GLAYだ。
善悪という定義には人によって差がある。
とかく、昨今の世の中は白黒をつけたがる
風潮に感じて仕方ない。
多様性が叫ばれている反面、それを認めず
個人の正義感を押し付けてくるという
世知辛いになりつつあるのかもしれない。

相手の価値を貶めることで相対的に
自分を優位に立たせようとする人。
それをアドラー心理学では価値低減傾向と呼ぶ。
いじめや差別もこの価値低減傾向の一種で、
優越コンプレックスの特徴だ。
強い劣等コンプレックスを持っている人が
自分よりも弱い人をターゲットとして苛め、
相対的に自分を上に位置づけようとする。
劣等・優越コンプレックスという自分だけの
方向から、他者への関心と貢献に視点を
切り替えていけば、自分も受け入れられるし、
他人も受け入れることができるという
幸福な状態を生み出すことができるのだ。
人生についての意味づけ。これをアドラー
心理学ではライフ・スタイルと言う。
人生とは自分のためだけに生きるのではない。
他人のために貢献していくということ。
それが巡り巡って自分の幸福につながる。

ニーチェは、このシャーデンフロイデに対して、
興味深く有意義な見解を持っていた。
シャーデンフロイデは、悪人がついぞ当然の報いを
受けたことに対する道徳的に正当な反応なのだと
思いたくなる。しかし、ニーチェは、シャーデン
フロイデは道徳的な正しさや、道徳の高さの証し
ではないと言っている。そのまったく逆で、
それは人の恨みの感情の証しであり、人の弱さや
虚無感の証しなのだそうだ。ニーチェは、欲求不満と
恨みを抱いている人だけが、他人をこき下ろしたり、
他人の失敗に満足を見出すことで、自分を優位な場所に
置こうとするのだといっている。
ニーチェにとって、真に優れた人物とは、
達成や成功を0、100で考えておらず、
他の誰かが敗者になることで、自分が勝者になれる
とは考えない人物なのだを指すらしい。

勧善懲悪とは、善が悪を懲らしめることを意味する。
この正義という定義は人によって差がある。
近い言葉で因果応報というものがある。
因果応報とは、人はよい行いをすればよい報いがあり、
悪い行いをすれば悪い報いがあるということだ。

自分の正義を人に押し付けるのではなく
自分なりの尺度を持って行動していきたいもんだなぁと
おぢさんはいつも思う。

(2022.09.30:コラム/上野龍一)


【 上野龍一 】
~プロフィール~

1975年4月28日生まれ
新潟県新潟市出身
「有限会社看板の上野」代表

経営者として人生経験を積む傍ら心理学、コーチング、エゴグラム心理分析などを研究。
自らを実験台に実績を繰り返して企業や学生への講師やコーチング、セミナーなどを開催する「可能性創造研究所」を設立。

また、地域イベントの企画、運営をするユニット「ニイガタ工務店」としても活動中。

「働くということは社会に貢献すること」を信条とし、様々な地域活動や企画運営を行っている。